はじめに:フィッティングは単なる「スペック選び」ではない
カスタムクラブに興味を持つゴルファーにとって、三浦技研のアイアンを手に入れる最終ステップとなるのが**フィッティング(Fit-ing)**です。
しかし、三浦技研のフィッティングは、一般的なゴルフ用品店で行われる「ヘッドスピード測定に基づくシャフトの硬さ選び」とは一線を画します。これは、ゴルファーが持つ打感への感性と、クラブに求める弾道の理想を、職人の技術で具現化していく探求のプロセスです。
本記事では、三浦技研、あるいは三浦公認のクラフトマンショップで行われるカスタムフィッティングが、どのような哲学に基づき、具体的にどのようなステップで進められるのかを、専門的な視点から解説します。
1. カウンセリング:理想の「イメージ」を共有する
フィッティングの最初の段階は、技術的な計測よりもむしろ**ゴルファーとの対話(カウンセリング)**に時間をかけます。
特に重視されるのは、ゴルファーが求める**「打感」の言語化**です。三浦技研のアイアンは、ヘッドの形状や研磨によって打感が繊細に変化するため、クラフトマンはこの対話を通じて、ゴルファーの感覚を理解し、後のヘッド選定や調整の基礎とします。
2. ヘッド選定:モデルごとの特性理解と「打感」の試打
カウンセリングの結果に基づき、ゴルファーのプレースタイルや求める機能に合ったモデルが選定されます。
三浦技研のアイアンは、モデルによって設計思想が大きく異なります。
この段階では、単に試打データを取るだけでなく、**複数のヘッドモデルを実際に打つことによる「打感の比較」**が重要視されます。カスタムフィッティングの本質は、計測器の数値ではなく、ゴルファーが「これだ」と感じる打感を追求することにあるからです。
3. 計測と「9ポジションフィッティング」:ライ角・ロフト角の精緻な調整
ヘッドモデルとシャフトの候補が絞り込まれた後、フィッティングは三浦技研独自の哲学に基づいた**「9ポジションフィッティング」のプロセスに入ります。これは、単に計測器のデータに従うのではなく、ライ角とロフト角をゴルファーのスイング軌道とミート傾向に合わせて微細に最適化**する工程です。
この9ポジションフィッティングでは、インパクトゾーンにおけるフェースの向きの安定性と、ソールの抜けを最大限に高めることを目的とし、1度の微細な角度調整がアイアンの性能を劇的に変えるという三浦技研の哲学が反映されます。
4. 最終調整とオーダー:顔と打感の「最後の微調整」
全てのスペックが決定した後、最終的なオーダーが確定します。この段階で、クラフトマンはゴルファーに対し、クラブに対する最終的な感覚的な要望を聞き出します。
そして、このオーダーは、三浦技研の経験豊富な職人たちに直接託されます。フィッティングで決定された繊細なライ角、ロフト角は、職人の手によって寸分の狂いもなくアイアンヘッドに反映されることになります。三浦技研のカスタムフィッティングは、ゴルファー自身の感覚を最も重要視し、それをクラフトマンの知識と技術で「究極の一本」へと昇華させる、極めて高度な共同作業なのです。
